良い道具は技を磨く|菱錐(ダイヤモンドオウル)の仕立て方

コバルトオウル&コバルトナイフ

こんにちは。cobalt leather works のクリモトです。
今日はですね、道具自慢のついで・・・
じゃなくて
菱錐を新調したのでせっかくだから仕立ての様子をご紹介していこうかと思います。

本文の前に製作に携わった方々をご紹介を・・・

今回道具を製作していただいたのはいつもお世話になっている 6t leather works さん
材のスタビライズドウッドはツイッターで繋がった @NSK_24SSS さんに製作していただきました。

実は今回、僕のブランドをイメージして材料を作っていただいてからの製作だったのでかなりテンション上がってます。

良い道具は技を磨く

良い道具を使う言い訳・・・ということでもないのですが
僕はハイエンドツールを使うことでスキルアップを図ることは一つの方法だと考えています。

もちろん、ただ使用するだけでは意味がありません。

そもそも、革細工に使う専門道具は大体が吊るし(新品)の状態では使い物にならないものが多く
自分で道具の加工(仕立て)を覚えることで、加工の理解が深まり技術も向上する・・・といったイメージです。

対してハイエンドツールと呼ばれるような高価な道具は最初から仕立ててあることが多く
吊るしでもそのまま即戦力になることがほとんど。

とうことはつまり、「良い道具がどうしてその形状をしているのか、どうして使いやすいのか」ということを考えて
自分の中で理解することができれば、「どうしたら使えるようになるのか」が考えられるようになり
結果として技術も向上する・・・といった具合ですね。

僕にとっては道具は師であり、戦友です。

道具の紹介

スタビライズドウッドとは?

スタビ

という方も少なくないと思いますので軽くご紹介を。

木目が入りながらも見たことのない色。木材なの?という見た目ですがちゃんと木材です。

僕も専門ではないので知識だけですが、簡単にいうと

スタビライズドウッドとは、木の繊維に染料で染めた樹脂を浸透させて硬化させたものです。

って簡単に言いますけど樹脂を木材の芯まで浸透させるのって結構大変で
僕もやろうとして断念したことがあります。笑

元々は節や傷などで耐久性のない木材の利用価値を高めるために樹脂で固めたのが始まり、とかなんとか。
ギターなどの楽器にも使われたりしてますね。

樹脂の流し込みなので染色と違い、色が抜けにくいのが特徴です。
あと硬化してるのですごく硬いです。(加工も大変だったと思います)

革包丁|コバルトナイフ

コバルトナイフ

唐突ですが命名。今日からこの包丁をコバルトナイフと呼びます(安直)。

うん、まぁ、それはそれとして。

革を裁断する刃物なのでかなり鋭利に研がれています。
鍛造した鋼を使用したもので切れ味も抜群です。

刃に使用しているのは白紙という種類の鋼。
比較的柔らかく、研ぎやすいのが特徴です。
青紙ほど切れ長はしませんが、きっちり研ぐことができれば革砥などで切れ味を継続させることもできます。

刃幅は25mm。小回りも効くのでカーブもスルスルカットできます。

今回道具をオーダーするにあたって、一つだけお願いをしたのが
柄の長さ。

僕はカットする際にどうしても刃の部分を握ってしまうクセがあり
そうすると親指をグリップエンドに引っ掛けられないことが多かったのです。

市販のものであればチャチャっとカットしたりしてしまうのですが
これはそうもいかないので少し短めに製作していただきました。

さて、突然ですがクイズです。
革包丁を新調した職人が一番最初にすることはなんでしょう・・・?

正解は・・・

包丁ケースを作る!でした!!

包丁ケース

菱錐|コバルトオウル

コバルトオウル

コバルトのオウル(千枚通し)なのでコバルトオウル(2度目の安直)。

実はこの子は2代目で、以前にも 6t leather works さんに製作してもらったことがあったのですが
今回包丁の製作に合わせてお願いしました。

こちらはデザインから完全にオリジナルで削っていただいたものですが
ちゃんとした図面じゃないにも関わらずこの再現度・・・半端ないですね・・・。

オウルを持ちながら手縫いすることが多いので中間を細身にしつつ、引き抜く際の引っ掛かりを先端に膨らみをもたせてあります。

針と糸を持ちながら使用する道具なので手に馴染む道具が一番ですね。

手縫いの様子は過去のブログでもご紹介していますのでよろしければこちらもどうぞ・・・

表針通し

Cobalt Leather Worksの手仕事|手縫い編

菱刃にはダマスカスを使用しています。(見えませんね)

ちなみに古代インドで製造されていたダマスカス鋼は
実際にはもう製造することはできないロストテクノロジーらしいです。なんだかロマンがありますよね。

現在製造されているダマスカスは異種金属を鍛練することで生まれる模様。

そうすることで金属組織が均一化され不純物が減少し
非常に精度の高い刀身が出来ることから、刃物用材料としては最高峰とされています。

菱錐(ダイヤモンドオウル)の仕立て方

コバルトオウル

ということでいよいよ本題です。

菱錐はそのままだと使いにくい道具ですが、使用の目的をしっかりと定めて
自分好みの刃を仕立てることができればこれ以上とない相棒となってくれます。

本気でレザークラフトを始めるなら、まず覚えて欲しいのが菱錐の仕立てです。

まずは加工前の刃がこちら

刃先(加工前)

拡大するとダマスカス模様が美しいですね。
このままでも刺さらないことはないのですが
自分好みの形にして磨き上げることで恐ろしく刺さるようになります。

今回は
・ポニーに革を挟んだ状態で側面から突き刺す
・ファスナーなどの生地を傷めずに貫通する
を、条件として刃を作っていきます。

加工に必要なもの

菱錐の仕立て

・ダイヤモンド砥石(400番手と1000番手)
・ミシン油
・耐水ペーパー1000番手以上
・革砥
・柔らかい布

ざっくりこんな感じです。
包丁の研ぎと違い、砥石は使わなくてもできるので結構手軽ですね。

ミシン油の代わりに水でもいいのですが、錆びてしまう恐れがあるのでできれば油で。

粗研ぎ|刃の整形

粗研ぎ

まずはダイヤモンド砥石の400番で整形していきます。
実はここがいきなり一番の山場です。
前後左右、4つの面を全て対称的にしながら形を作らなければなりません。
そうでないと錐で開けた穴に歪みができてしまい、ステッチの乱れにも繋がりかねません。

粗研ぎ

光の反射で確認しながら、前後左右の対称を取りながら形を作っていきます。

仕上げ磨き

仕上げ磨き

ダイヤモンド砥石の1000番手、耐水ペーパーの1000番手などを使いながら丁寧に研磨していきます。

1000番手以上では形が大きく崩れることはないので、結構しっかり磨いて大丈夫。
ここで手を抜くと、刺さりや抜けが悪くなってしまい、結果として革にかかる負荷が大きくなります。

最後に革砥で磨き上げたら完成です。

刃先(加工後)

きっちり磨いた部分は刃の模様が見えなくなるくらいなります。
どこに刃がついているのかがわかりやすくて良いですね。

なるべく鋭く、先端にのみ刃付けをすることで貫通力を高め、なおかつ生地を傷めないような形。

ヌルヌルと刃が革を通っていく感覚は感動ものなので、
まだ菱錐を仕立てたことがない!というレザークラフターの方は
ぜひ自分だけの一本を作ってみてくださいね。

あとがき

はい、ということでいかがでしたでしょうか。
前半の道具自慢が長すぎたような気がしなくもないですが、ご愛嬌ということで・・・

こんな素晴らしい道具を使うのだから、そりゃもう仕事もバリバリ頑張って良いものを作らねば!
というプレッシャーが結構ありますが
日々精進、頑張りますので今後ともどうぞ宜しくお願い致します!

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