こんにちは、cobalt leather works のクリモトです。
今日のブログは昨今話題になっている「革」「レザー」という言葉のついた素材についてのお勉強です。
先日、日本皮革産業連合会より
【「革」「レザー」と呼べる製品は、動物由来のものに限定する】
というリリースがありました。
これはJIS(日本産業規格)にて2024年3月に正式に規定されたもので
5月に開催された東京レザーフェアでもセミナーが開かれました。
具体的にどういうことかというと
ここ数年で台頭してきた「ヴィーガンレザー」や「サボテンレザー」などの
呼び方も変わってくる、ということです。
ではでは、あまり耳慣れない言葉も出てくるので一つずつご説明をば・・・
目次
概要|JIS用語規定の改正について
まずはこちらのリーフレットをご覧ください。
「革」「レザー」と呼ばれる製品は動物由来のものに限定する。
とありますね。
革が好きな皆さん、お店でお買い物するに
素材で気になることは「これは本革?人工皮革?」
ということではないでしょうか。
そういった際に「〇〇レザー」とか「〇〇革」といった表記があると
誤解が生まれやすいですよね。
今回の規定では、そういった言葉の誤解をなくし、「革」という素材がどういったものなのか
ということを改めて知ってもらえる良いきっかけなのではないでしょうか。
特にここ数年で台頭してきた
新素材としてアップル・マッシュルーム・サボテン・バナナなど植物繊維を使用してシート状に加工した
いわゆる「ヴィーガンレザー」と呼ばれてきた素材は注目度も高く、それ故に本革との違いを明確にしなければならなかったのだと思います。
※蛇足ですが、ヨーロッパでは2015年頃から「leather」 に関する表記について
欧州規格ENの規定を定めているなど早い段階から動きがあったようです。
JIS(Japanese Industrial Standards) 日本産業規格とは
JISとは主に品質の改善、生産の合理化、取引の単純公正化
使用や消費の合理化を図ることなどの保証のために定められた基準のこと。
今回のケースでは「革」「レザー」の言葉の多様化・複雑化を避けるということによる
「取引の単純公正化」の意味合いが強いと考えます。
ちなみに法的な強制力はありませんが、上記の内容は最終的に消費者を保護するためのものなので
企業は原則的に遵守しなければなりません。
革、本革、レザーと呼べる素材とは
もちろん、こちらも規定があり
「皮本来の繊維構造をほぼ保ち、腐敗しないように鞣した動物の皮」のことを指します。
鞣しについてはこちらでもご紹介しておりますのでよろしければ▼
厳密には、加工の制限もあり
・表面や床面に塗布できる仕上げは0.15mm以下におさめる
・粉砕して固着、シート状に加工したものはNG
などとあります。
特に重要なのは「本来の繊維構造」
動物の繊維構造は植物のそれとは比べるべくもなく堅牢で柔軟です。
樹脂や石油素材を使用しないので加水分解の心配もなく、故に「長く使える」と謳われるのです。
今回規定される素材について
植物由来のものもそうですが、多くは樹脂や石油系の素材を混ぜて強度を上げている素材。
表面の加工技術は昨今格段に向上しており、一見して見分けが付きづらいのですが
やはり本革と比較すると繊維構造は全くの別物。
といっても繊維構造を肉眼で見ることなんてできる訳もなく
消費者からすると見た目では判断し難い。
だからこそ言葉はちゃんと使い分けよう、ということですね。
今回の規定では
PUレザー・フェイクレザー・・リサイクルレザー・再生革・ヴィーガンレザー・エシカルレザーなどなど
掘り出せばいくらでも出てきてしまうのですが、そういった「革」ではない素材は
今後「〇〇レザー」と表記できなくなります。
僕自身、一消費者としてこれは分かりやすいですし、嬉しいですね。
皮革繊維再生複合材
こちらは天然皮革を一度粉砕、粉末状にしてから樹脂などで固めたシートのこと。
乾燥質量で50%以上粉末を含ませてはいますが、イメージ的には合成コルクシートのような感じですね。
合成皮革・人工皮革
この二つは似ていますが、厳密には基礎となる生地が異なります。
人工皮革の方が複雑な構造、という認識で良いのですが、どちらも表層に石油系素材を用いて革の外観に似せて加工したシート。
ヴィーガン・エシカル系の呼び方はどうなる?
流行りの新素材はどうなるか気になるところではありますが・・・
今回の規定は『革とは斯くあるもの』を定めたものであり
それ以外を規制するものではないので、呼び方は自由ですが「革」「レザー」の言葉以外で表現してね。
ということになります。
サボテンシートとか、バナナファイバーとか・・・?
こうして考えると〇〇レザーっていう言葉は魔法のようにかっこいいですね。
レザーカッコイイ(ド主観)
正しく知ってもらうことの大切さ
さて、これまでも定期的にブログやSNS(X(旧Twitter)など)でも発信はしているつもりではありましたが
こうしてJIS規格が定まり、リリースがされたことは大きな前進かな、と考えています。
だって、革だと思っていたものが、実は合成皮革で
数年でボロボロに崩れてきた・・・なんてことがあったら悲しいですよね。
もちろん、合成皮革や人工皮革にも
コストが抑えられたり、防水性が高かったり、気軽に使えたり、加工しやすかったりなど
メリットもあるので決して悪者ではありません。
ただ、そこは表記をちゃんとして、誤解のないように正しい知識を持って使おう
ということが何よりも大事なのだと思います。
対立ではなく、棲み分けの話ですね。
僕自身、革を扱う一人のクリエイターとして
そういうことがないようこれからも発信を続けていきたい所存。
当然のごとく、革推しなので革の良いところ中心にはなると思いますが・・・。
過去の記事ですが、革の豆知識やケア関連のブログも編集しておりますので
よろしければ覗いてみてください。
革のケアやエイジングについてはこちら▼
革にまつわるアレコレはこちら▼
ではでは本日はこの辺で。
今日も製作頑張りまーす!
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